上槽から瓶詰めまで – 最後の仕上げを徹底解説

知識

前回の記事で、日本酒造りの流れについて簡単に触れましたが、今回は上槽から瓶詰めまでの部分をより詳しく見ていきたいと思います。日本酒の最終工程には、細かい技術や職人の経験が詰まっていて、これによって日本酒の品質や風味が決まると言っても過言ではありません。

1. 上槽(じょうそう) – 酒粕と液体を分ける重要な作業

「上槽」とは、発酵が終わった醪(もろみ)から、液体の日本酒を搾り出す工程です。この段階で酒粕と日本酒が分けられます。上槽にはいくつかの方法があり、伝統的な「槽(ふね)」と呼ばれる木製のプレス機で搾る方法や、現代の自動圧搾機を使った方法があります。

  • 槽搾り(ふなしぼり):木製の槽で搾るこの方法は、昔ながらの技法で、手間はかかりますが、独特の柔らかい風味を生み出します。
  • 自動圧搾機:近代的な方法で、効率的に大量の日本酒を搾り出すことができます。酒質の安定も図れるため、多くの蔵で使用されています。

最初に出てくる部分は「荒走り(あらばしり)」と呼ばれ、比較的軽やかでフレッシュな味わいが特徴です。その後に出てくる部分は「中取り(なかどり)」や「中汲み(なかぐみ)」と呼ばれ、風味が一番整ったバランスの良い部分とされています。

2. 滓引き(おりびき) – 日本酒をクリアにする工程

上槽後、日本酒には微細な固形物がまだ残っていることが多く、これを沈殿させるのが「滓引き」です。この工程を経て、タンクの底にたまった滓(おり)を取り除きます。滓をしっかりと引くことで、日本酒は透明度が増し、美しい見た目とすっきりとした味わいを生み出します。

  • 滓酒(おりざけ):滓が多く残った日本酒も存在し、これを「滓酒」と呼びます。通常の日本酒とは違った、旨味が濃厚な風味が楽しめます。

3. 濾過(ろか) – 余分な不純物を取り除く

次に行われるのが「濾過」の工程です。滓引きだけでは取り除けない微量な不純物や雑味を除去するために、活性炭などを使用して濾過します。この工程は、透明度を高め、クリーンな味わいにするために非常に重要です。

  • 無濾過(むろか):あえて濾過を行わない「無濾過」の日本酒もあります。これにより、より生々しい風味が残り、日本酒の自然な味わいが楽しめます。

4. 火入れ(ひいれ) – 品質と保存性を高める

「火入れ」は、日本酒の風味と品質を安定させるための低温加熱処理です。通常、60〜65℃程度で10分ほど加熱し、酵素や微生物の働きを止めます。これによって、酒質の変化が抑えられ、長期間にわたって安定した味わいを保つことができます。

  • 2回の火入れ:多くの日本酒は出荷前に2回の火入れが行われますが、生酒や生貯蔵酒、生詰め酒のように、1回のみ、または全く火入れを行わないタイプの日本酒もあります。

5. 貯蔵 – 味を落ち着かせる時間

火入れ後、次に行われるのが「貯蔵」の工程です。貯蔵期間中に日本酒は熟成し、風味がよりまろやかに整います。貯蔵方法や期間は蔵によって異なり、短いもので数週間、長いもので数年に及ぶこともあります。

  • 新酒:貯蔵せずにすぐに瓶詰めされるものは「新酒」として出荷されます。これらはフレッシュで若々しい味わいが楽しめます。

6. 調合(ブレンド) – 味の調整

貯蔵が終わると、次は複数のタンクから日本酒を取り出し、ブレンドする「調合」が行われます。この工程は、同じブランドや銘柄の味わいを均一にするために重要です。異なるタンクで発酵させた日本酒を絶妙なバランスでブレンドすることで、消費者がいつも同じ味わいを楽しめるようになります。

7. 割水(わりみず) – アルコール度数を調整する

「割水」とは、アルコール度数を調整するために水を加える工程です。日本酒は通常、発酵後の段階ではアルコール度数が20%前後ありますが、出荷前に水を加えて15〜16%程度まで調整します。この作業によって、日本酒の飲みやすさが調整されるのです。

  • 原酒:一方で、割水を行わない「原酒」は、アルコール度数が高く、しっかりとした味わいを楽しめます。個性的な風味が特徴で、愛好家に人気です。

8. 瓶詰めとラベル貼り – 最後の仕上げ

最終的に日本酒が瓶に詰められ、ラベルが貼られます。この段階で商品としての日本酒が完成し、いよいよ出荷される準備が整います。ラベルには日本酒の名前や製造年月日、アルコール度数、蔵元の情報などが記載されており、消費者にとっては大事な情報源となります。

まとめ

日本酒が私たちの手元に届くまでには、非常に多くの工程が含まれ、どのステップも品質に大きな影響を与えます。上槽から瓶詰めまでの作業は、日本酒造りの集大成とも言え、その緻密な作業によって、私たちは美味しいお酒を楽しむことができるのです。

このプロセスを知っておくことで、飲む日本酒に対する理解と愛着がさらに深まるのではないでしょうか。次に日本酒を選ぶときには、ぜひこれらの工程を思い出してみてくださいね。

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