協会701・901・1801の違いとは?── 香り・酸・酒質から理解する代表的酵母の個性

原料

日本酒のラベルや解説を読んでいると、「協会701号」「901号」「1801号」といった数字を目にすることがあります。

数字だけを見ると少し無機質に感じますが、実はこれらは日本酒の香りや味わいを大きく左右する、重要な要素です。

酵母はアルコールを生み出すだけでなく、吟醸香と呼ばれる華やかな香りの成分も生成します。同じ米・同じ精米歩合でも、酵母が変われば酒の性格は大きく変わります。

今回は、代表的な協会酵母である701・901・1801を、香り・酸・酒質の観点から整理してみます。数字ではなく“個性”として理解することが目標です。


協会酵母とは何か

協会酵母とは、日本醸造協会が分離・培養し、全国の酒蔵に頒布している清酒酵母です。号数は基本的に分離された順番に付けられています。

多くの協会酵母は、もともと優れた酒質を生み出した蔵付き酵母が起源です。そのため、それぞれに明確な個性があります。

701・901・1801は、その中でも現在広く使われている代表的な酵母です。


協会701号酵母 ― バランス型の基準

701号は、いわゆる7号系統に属する酵母です。7号酵母は戦後の清酒造りを支えた歴史的な存在で、安定性とバランスの良さに定評があります。

香りの面では、酢酸イソアミル(バナナ様香気)を中心とした穏やかな吟醸香を生み出します。カプロン酸エチル(リンゴ様香気)はそれほど強くありません。

酸はややしっかりと出る傾向があり、全体として調和の取れた酒質になりやすいのが特徴です。

純米酒や食中酒タイプなど、香りを主張しすぎない酒質設計と相性が良く、「基本形」とも言える存在です。

派手さはありませんが、安定感と再現性の高さが強みです。


協会901号酵母 ― 吟醸型の象徴

901号は、9号酵母の改良型にあたります。9号酵母は吟醸酒の発展に大きく寄与した酵母として知られています。

最大の特徴は、カプロン酸エチルを多く生成する点です。リンゴのような華やかな吟醸香を生み出し、透明感のある酒質に仕上がります。

酸は701号よりやや低めで、軽快な印象になります。

吟醸酒や香りを重視した設計に向いており、現代的な日本酒のイメージを形づくってきた酵母と言えます。

901号は「香る酒」の代表格です。


協会1801号酵母 ― 高エステル型の進化形

1801号は、9号系統をさらに発展させた高エステル生成型酵母です。

カプロン酸エチルの生成量が非常に多く、華やかな吟醸香がより強く現れます。加えて、酸が低めに出やすい特性があり、全体としてきれいで洗練された印象になります。

大吟醸酒や品評会向けの酒質設計に適しており、香りを明確に打ち出したスタイルに向いています。

901号が吟醸型の基準だとすれば、1801号はその“強化版”と考えると理解しやすいでしょう。


なぜ香りが変わるのか

酵母は発酵中に糖をアルコールへ変換するだけでなく、脂肪酸代謝の過程でエステル類を生成します。

カプロン酸エチルや酢酸イソアミルといった吟醸香成分は、酵母の持つ酵素活性や代謝経路の違いによって生成量が変わります。

さらに、発酵温度や栄養条件によっても香気成分の生成は影響を受けます。

つまり、酵母の性格は「どの香気成分をどれだけ生み出すか」という代謝特性の違いによって決まります。


三者を比較すると

酵母香り酒質傾向
701穏やか(バナナ系)ややしっかりバランス型
901華やか(リンゴ系)やや低め吟醸型
1801非常に華やか(リンゴ強)低め大吟醸向き

こうして整理すると、701→901→1801は「香りの強化」という流れで理解できます。


数字ではなく“香りの進化”で理解する

701は基準型。
901は吟醸型。
1801は高エステル型。

数字を丸暗記するのではなく、「香りの進化段階」として捉えると整理しやすくなります。

酵母は酒の性格を決める重要な設計要素です。

ラベルに書かれた酵母番号を少し意識するだけで、日本酒の世界はぐっと立体的に見えてきます。

数字の裏には、それぞれの酒質を形づくる代謝特性があるのです。


次は「表示と分類」を理解する

ここまで、酒母・酒米・酵母という“原料と設計”の視点から、日本酒の構造を見てきました。

では、その設計はどのようにラベルに表現されているのでしょうか。

純米酒、吟醸酒、大吟醸酒。
特定名称酒とは何か。
精米歩合やアルコール添加は何を意味しているのか。

原料を理解した今だからこそ、表示の意味が立体的に見えてきます。

▶ 表示と分類を理解する

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