並行複発酵とは?日本酒の製造工程をやさしく徹底解説

製造メカニズム

日本酒の仕組みでいちばん大事なのは、実は「工程名」を覚えることではありません。
ポイントはたった一つ。糖を作る役(麹)と、アルコールを作る役(酵母)が、同時に働くことです。これを並行複発酵と呼びます。

「米から直接アルコールが出る飲み物」と思っていると、日本酒はいつまでも分かりにくいまま。
でも、麹と酵母の“二人三脚”だと分かると、製造工程が一気につながって見えてきます。

並行複発酵とは?(図で最短理解)

並行複発酵を、いちばん短く言うとこうです。

  • 糖化:麹が、米のでんぷんをに変える
  • 発酵:酵母が、その糖からアルコールを作る
  • この2つが同時進行で進むのが、日本酒の特徴
並行複発酵の図(糖化と発酵が同時進行する仕組み)

ここで大事なのは、並行複発酵という言葉は「覚えるための専門用語」ではない、ということです。
これは、日本酒づくり全体を理解するための“考え方”です。

麹が糖を作り、酵母がアルコールを作る。この同時進行を軸にして考えると、 「なぜ酒母で酵母を先に増やすのか」 「なぜ段仕込みで分けて入れるのか」 「なぜ火入れで止めるのか」 といった工程の意味が、自然につながってきます。

つまり、並行複発酵を理解することは、日本酒の工程を“理由つき”で理解することにつながるのです。

工程を「順番」ではなく「何を増やすか」で理解する

日本酒の製造工程はたくさんありますが、順番だけを並べると暗記になってしまいます。
そこで本記事では、工程を「何を増やす工程か」という観点でまとめます。

① 精米:雑味になりやすい成分を減らす

精米は、米の表層部に多い成分(たんぱく質・脂肪など)が多すぎると香味を悪くし得るため、必要量を残しつつ減らす意図で行われます。

精米歩合60%は「60%削る」ではなく、「40%削って60%残す」という意味です。

② 蒸米 → ③ 麹造り:糖化のエンジンを作る

麹造りは、でんぷんを糖に分解する「糖化」を担う工程で、日本酒では麹菌の酵素が糖化を担当します。糖ができないと、酵母はアルコールを作れません。

つまりこの段階でやっていることは、「酵母が食べられる糖を、途切れなく供給する仕組み」を用意することです。

④ 酒母:酵母を“先に増やす”スターター

酒母は、もろみ発酵を安定させるために「良い酵母を大量に培養する」工程として位置づけられています。いきなり本番(もろみ)で酵母を増やすのではなく、先に“安全な環境”で増やしておく。
この発想があると、「なぜ酒母が必要なのか」が理解できます。

⑤ 段仕込み:温度・雑菌・酵母をコントロールする

段仕込みは、初添え→踊り→仲添え→留添えの順で仕込みを進めます。
材料を一度に入れず段階的に加えることで、雑菌の繁殖を抑えながら酵母を十分に増やし、温度管理もしやすくします。

⑥ もろみ:並行複発酵の本番

もろみ工程では、酒母に麹・蒸米・水を加えて仕込み、発酵を進めます。

発酵を終えたもろみは圧搾され、酒と酒粕に分けられます。その後、ろ過・火入れ・貯蔵へと工程が続きます。

そしてここが、日本酒の核心。
もろみの中で、麹が糖を作り続け(糖化)、酵母がその糖をアルコールに変え続ける(発酵)。
この“同時進行”が、並行複発酵です。

もろみの中で麹と酵母が働くイメージ図

⑦ 搾り→ろ過→火入れ→貯蔵→瓶詰め

発酵を終えたもろみは搾り、ろ過し、必要に応じて火入れや貯蔵を経て出荷されます。

工程全体フロー

工程が多くて混乱してきたかもしれません。
そこで一度、全体の流れを一枚の図で整理してみましょう。
どこで何を準備し、どこで並行複発酵が起きているのかに注目して見てください。

日本酒づくりの工程全体フロー図

まとめ

日本酒づくりの核心は、とてもシンプルです。
麹がでんぷんを糖に変え(糖化)、酵母がその糖からアルコールを生み出す(発酵)。
この二つが同時に進む仕組みこそが、並行複発酵です。

そして、数多く存在する工程は、この並行複発酵を「うまく成立させるため」、そして「生まれた酒の香り・味わい・品質を守るため」に配置されています。

工程名を暗記するよりも、まずはこの構造を理解すること。
それが、日本酒を深く理解するためのいちばんの近道です。



▶ 次は「三段仕込み」を学びます

並行複発酵の仕組みが理解できたら、次に押さえたいのが「段仕込み」です。なぜ日本酒は原料を3回に分けて加えるのでしょうか?その理由は、発酵を安定させるための合理的な工夫にあります。

段仕込みとは?三段仕込みと「踊り」の意味をやさしく解説


三段仕込みの流れと、「踊り」と呼ばれる重要な工程の意味を整理していきましょう。

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