官能評価は、人の感覚(五感)を使って、製品の特性や好みを評価する方法です。目的によって、特性を調べる分析型と、好みを知る嗜好型に分かれ、評価する人(パネル)の選び方も違います。化粧品では、感触や香りなど、機器だけでは分かりにくい使用感を評価するのに使われます。(確認日:2026年11月3日)
このテーマのまとめ:化粧品の品質と安全性まとめ|トラブルと官能評価
「しっとり」「さっぱり」と、使用感を言葉にするのは意外と難しいですよね。その難しさを減らす工夫が、官能評価の考え方です。
官能評価とは
官能評価は、ヒトの感覚器官(視覚、嗅覚、触覚など)を測定の道具として使う評価です。化粧品では、のび、なじみ、べたつき、香り、色味など、数値だけでは分かりにくい特徴を扱います。
- 用語は、日本産業規格 JIS Z 8144「官能評価分析-用語」で定義されています
- 人の感覚は個人差や、その日の体調・環境の影響を受けるため、条件をそろえ、評価者を選び、統計的に整理することが大切です
評価の方法(表)
「分別する」「順番をつける」「点数をつける」など、目的に合わせて方法を選びます。
| 方法 | 何をするか | 向く場面 |
|---|---|---|
| 識別法(2点・3点など) | 試料に差があるかを見分ける(3点識別法では、3つのうち異なる1つを当てる) | 処方を変えたときに、差が感じられるかを確かめる |
| 順位法 | 試料に順番をつける | 複数の試料の序列を知る |
| 評点法(尺度法) | 点数や段階をつける | 「しっとり」などの強さを数値にする |
| 一対比較法 | 試料を2つずつ比べる | 好みや強さの比較 |
| 記述的方法 | 特性を言葉で表す | 感触や香りの特徴を言葉で整理する |
パネル:分析型と嗜好型
| 型 | 目的 | パネル(評価する人) |
|---|---|---|
| 分析型 | 製品の特性を、できるだけ客観的に調べる | 感覚の鋭さを確かめ、訓練を受けた人(専門家パネル)を選ぶ |
| 嗜好型 | 製品の好ましさ(好み)を調べる | 一般消費者の好みを代表する人を選ぶ |
分析型は「ヒトの感覚を使ってモノの特性を測る」評価、嗜好型は「モノを使ってヒトの感性を知る」評価、と整理できます。原則として、分析型では好き嫌いの判断をさせず、嗜好型では客観的な特性の評価は行わないよう、使い分けます。
使用感を表す言葉
使用感は、言葉にしないと伝わりません。化粧品の開発や説明でよく使われる言葉を、感覚の種類で整理します。
| 感覚 | 言葉の例 |
|---|---|
| 触覚(塗ったときの感触) | のびがよい、なじみがよい、べたつく、さらさら、しっとり、さっぱり |
| 肌あと感 | つっぱる、うるおいが残る、なめらか |
| 嗅覚 | 華やか、さわやか、甘い、フローラル |
| 視覚 | 透明感、色づき、つや |
言葉の選び方には、次のような課題があります。
- 同じ言葉でも、人によって受け取り方が違う
- 評価に使う評価用語の選定を、あらかじめ決めておく必要がある
- 言葉と、粘度などの物理的な数値は、1対1で対応するとは限らない
機器による評価との違い
| 評価 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 官能評価 | 人の感覚で評価する。使用感、好み、においなどに強い | 感触の違い、香りの好み |
| 機器による評価 | 数値で測る。再現しやすい | 粘度の測定、角層水分量の測定、においの成分分析(GC/MSなど) |
どちらか一方ではなく、組み合わせて使うのが一般的です。たとえばにおいは、人の嗅覚でしかとらえにくい特徴もあるため、人による官能評価と、GC/MSなどの機器分析を組み合わせて解析します。
評価で気をつけること
- 条件をそろえる:温度、湿度、塗る量や部位、時間など
- 先入観を避ける:食品の官能評価では、製品名やパッケージを伏せて比べる(ブラインド)ことがある
- 提示の順番を変える:食品の官能評価では、最初に評価する試料が有利に感じられるなどの影響を減らすため、提示順を変えることがある
条件をそろえる点は、化粧品の研究機関(コーセー系の研究財団)と資生堂の解説でも触れられています。ブラインドや提示順は、広島県の官能評価解説(食品)と一創のJIS Z 9080の解説にある、官能評価の一般的な考え方です。化粧品の評価でも同じように行われるとは限らないため、ここでは一般的な考え方として紹介します。
試験での問われ方(取り違えやすい点)
区別して覚えたいのは、次の点です。
- 官能評価の定義:人の感覚を使って評価する方法です
- 分析型と嗜好型:分析型は特性を調べ、訓練したパネルを使います。嗜好型は好みを調べ、一般消費者に近いパネルを使います
- 方法の名前:識別(見分ける)、順位(順番をつける)、評点(点数をつける)、一対比較(2つずつ比べる)
- 機器評価との違い:官能評価は人の感覚、機器評価は数値で測ります。組み合わせて使います
- 条件をそろえる理由:個人差や環境の影響を減らすためです
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