遮音は、音を壁や床の反対側へ「通さない」こと、吸音は、室内で音を「反射させない」ことです。目的が違うので、材料も使い方も違います。この記事では、2つの違い、床衝撃音(軽量・重量)と等級の見方、吸音材・遮音材の種類、床の構法を整理します(確認日:2026年11月1日)。
このテーマのまとめ:環境工学を整理する
遮音と吸音の違い
| 遮音 | 吸音 | |
|---|---|---|
| 目的 | 音を、壁や床の反対側へ通さない | 室内での、音の反射や残響を抑える |
| 使う指標 | 透過損失(単位はdB) | 吸音率(0〜1の値) |
| 数値の向き | 透過損失が大きいほど、遮音性能が高い | 吸音率が大きい(1に近い)ほど、よく吸う |
| 材料の見方 | 音を通しにくい材料や構造 | 音を吸収する材料や構造 |
吸音率は、壁などに当たった音のうち、反射されなかった音の割合です。
遮音の考え方
質量則とすき間
同じ材料なら、厚いほど、また密度が大きいほど、透過損失は大きくなります(質量則)。重くて厚い壁や床ほど、音を通しにくい、ということです。
遮音では、すき間が弱点になります。ドアや窓サッシのすき間から、音が漏れるためです。壁を二重にすると、理論上は透過損失を大きくできますが、実際には理論どおりの効果は出にくいとされます。
住宅性能表示制度の「音環境」
住宅性能表示制度の「音環境」には、次のような項目があります。
- 重量床衝撃音対策・軽量床衝撃音対策(上下の住戸の間の床)
- 透過損失等級(界壁)(隣の住戸との間の壁)
- 透過損失等級(外壁開口部)(外からの音を通しにくいか)
制度の全体は、性能計画と維持管理で整理しています。
床衝撃音(軽量・重量)と等級
床衝撃音は、上の階の床に加わった衝撃が、下の階に伝わる音です。衝撃の種類で、2つに分けます。
| 種類 | 記号 | 衝撃の例 | 変わりやすい要素 |
|---|---|---|---|
| 軽量床衝撃音 | LL | スリッパの歩行音、スプーンを落とす音、椅子の移動音 | 床の仕上げ材の種類 |
| 重量床衝撃音 | LH | 子どもが走り回る音、飛び降りる音 | 床スラブ(コンクリート)の厚さ、梁に囲まれた面積 |
軽量は、軽くて硬い衝撃の音、重量は、重くて鈍い衝撃の音です。
等級の見方
床衝撃音の等級は、「LL-45」のように、記号と数値で表します。数値が小さいほど、遮音性能が高いことを表します。
| 指標 | 何を表すか | 数値の向き |
|---|---|---|
| L値(L等級) | 想定した構造の建物で、一定の衝撃を与えたときの、下の階の衝撃音の大きさ | 小さいほど、遮音性能が高い |
| ΔL等級 | 床材そのものの、床衝撃音を低減する性能 | 大きいほど、遮音性能が高い |
目安として、階下への音が気になる場合は、軽量床衝撃音でLL-45やLL-40が、一つの目標に挙げられます(解説サイトの目安で、法令や規格の基準値ではありません)。
また、床の遮音性能は、試験室などで測った値です。実際の建物では、壁などを伝わる音の影響で、表示より劣ることがあります。表示より少し余裕をみて選ぶ、とされています。
遮音材・吸音材の種類と構法(機能材料)
吸音材の種類
吸音のしくみで、3つに分けられます。
| 種類 | しくみ | 得意な音 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 多孔質型 | 繊維や小さな孔の中で、空気が摩擦して、音のエネルギーが熱に変わる | 高音域 | 低音域は苦手。フェルトなど |
| 共鳴器型 | 孔のあいた空洞の中で、空気が振動して、音のエネルギーが熱に変わる | 低音域(共振する音の近く) | 背後に空気層が必要 |
| 板(膜)振動型 | 板が振動して、音のエネルギーが熱に変わる | 低音域 | 背後に空気層が必要 |
遮音の構法
遮音は、「重く、厚く」「すき間をつくらない」が基本です。床では、次のような構法があります。
| 構法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 二重床(置き床) | コンクリートスラブの上に支持脚を立て、その上に床板を張る | マンションで多く使われる。床下の空間に、配線や給排水管を通しやすい。天井高が低くなる |
| 浮き床 | 床板を、弾力性のある防振材で支え、構造体から絶縁する | 音が構造体へ伝わるのを防ぐ |
| やわらかい仕上げ材 | カーペットや、クッション材を裏打ちした仕上げ材を使う | 軽量床衝撃音の低減に有効 |
二重床の遮音性能は、支持脚の防振ゴム、床板の構成、床下の空気層などで変わります。試験のときと同じ納まりで施工しないと、所定の性能が出ない場合があります。
床・壁・天井の構法は、床・壁・天井の構法で整理しています。
試験での問われ方
遮音と吸音は、協会の審査基準で、「環境と設備」の分野(分野7)の、環境工学にあたります。このテーマは、次のような形で知識を使います。
- 遮音と吸音の目的・指標を区別する
- 軽量床衝撃音(LL)と重量床衝撃音(LH)を、衝撃の例で区別する
- L値・ΔL等級の、数値の大小と性能の向きを答える
- 吸音材の種類(多孔質型・共鳴器型・板振動型)を、得意な音域と結びつける
取り違えやすい点は、次のとおりです。
- 遮音と吸音の入れ替え(吸音は反射を抑える、遮音は通さない)
- 軽量(LL)と重量(LH)の、衝撃の例の入れ替え
- L値は小さいほど良く、ΔL等級は大きいほど良い(向きが逆)
- 多孔質型は高音域、共鳴器型・板振動型は低音域、という音域の入れ替え
独学では、用語を暗記しがちですが、「遮音は通さない、吸音は反射させない」と、目的で分けて覚えると、材料の使い分けも思い出しやすくなります。
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