肌のバリア機能は、角層が「外からの刺激や異物を防ぐ」と同時に「体内の水分が逃げるのを防ぐ」はたらきです。うるおいを保つ要素は、皮脂膜・NMF(天然保湿因子)・細胞間脂質の3つで、それぞれ「いる場所」と「役割」が違います。この記事では、その違いを整理します。(確認日:2026年11月3日)
このテーマのまとめ:皮膚の構造としくみまとめ|表皮・真皮・皮下組織と付属器官
保湿因子は3つあります。まず全体像を図で見てから、1つずつ分けていきましょう。
バリア機能とは
バリア機能は、要するに肌が外の世界との境目で働く防御の力です。2つの方向があります。
- 外から:乾燥、刺激、紫外線、微生物などが入り込むのを防ぐ
- 内から:体内の水分が蒸発して逃げていくのを防ぐ
この主役が、表皮のいちばん外側にある角層(厚さ約0.02mm)です。角層は、レンガとモルタルにたとえて説明されます。角質細胞が「レンガ」、そのすき間を埋める細胞間脂質が「モルタル」です。
角層の細胞や層の特徴は、表皮の構造で確認できます。
3つの保湿因子
| 因子 | いる場所 | 主な成分 | はたらき |
|---|---|---|---|
| 皮脂膜 | 角層の表面 | 皮脂と汗が混じり合ったもの | 肌の表面をうすくおおい、水分の蒸発を抑える。なめらかさを保つ。弱酸性 |
| NMF(天然保湿因子) | 角質細胞の中 | アミノ酸(主成分)、乳酸、尿素、PCA、クエン酸塩など | 水分を抱え込み、角質細胞をうるおいのある状態に保つ。水に溶けやすい |
| 細胞間脂質 | 角質細胞と角質細胞のすき間 | セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸 | 水分を挟み込む層(ラメラ構造)をつくり、水分の蒸発と異物の侵入を防ぐ |
要するに、「NMFは細胞の中」「細胞間脂質は細胞のあいだ」「皮脂膜は肌の表面」と、いる場所で覚えると区別しやすくなります。
NMFのもとがつくられる場所:顆粒層でつくられるたんぱく質(フィラグリン)が、角層で分解されてアミノ酸などになり、NMFとして角質細胞の中にたまります。
皮脂膜のでき方:皮脂腺から出る皮脂と、汗腺から出る汗が混じり合って、肌の表面に広がります。付属器官の詳細は皮膚の付属器官で扱います。皮膚表面の弱酸性については皮膚表面の構造で確認してください。
細胞間脂質とセラミド
細胞間脂質の主な成分は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸です。セラミドは、細胞間脂質の約半分を占めるとされます(資料により30〜50%とする記載もあります)。
- 細胞間脂質は、顆粒層の細胞にある顆粒から放出され、角質細胞のすき間に広がります
- 水の層と油の層が交互に重なる「ラメラ構造」をつくり、水分を挟み込みます
- セラミドは、細胞間脂質のなかでもとくに主役となる成分です
「セラミドは細胞間脂質の主成分」「NMFの主成分はアミノ酸」と、成分と場所を結びつけて区別して覚えたい点です。
バリア機能が低下するとどうなるか
バリア機能が下がると、2つの変化が起きます。
- 水分が逃げやすくなる:肌が乾燥し、つっぱり、かさつきを感じやすくなります
- 刺激が入りやすくなる:化粧品や外気の刺激を感じやすくなります
バリア機能を下げる要因は、洗いすぎ、乾燥した環境、紫外線、加齢、睡眠不足、ストレスなどが挙げられます。NMFは水に溶けやすい性質があるため、長時間の水との接触や洗いすぎで失われやすい点もポイントです。ターンオーバーが乱れると未熟な角層が増えるため、バリア機能の低下につながります(表皮のターンオーバー)。
乾燥肌への具体的な対処は乾燥肌の原因とお手入れで扱います。肌の赤み、かゆみ、ヒリヒリする感じが続くときは、化粧品の使用をやめて、医療機関に相談してください。
試験での問われ方(取り違えやすい点)
混同しやすいので、次の違いを覚えておきましょう。
- いる場所:NMFは角質細胞の「中」、細胞間脂質は細胞の「すき間」、皮脂膜は肌の「表面」です。
- NMFの主成分:アミノ酸です。セラミドはNMFではなく、細胞間脂質の成分です。
- 細胞間脂質の主成分:セラミドです。
- 水に溶けやすいのはNMF:洗いすぎなどで流れ出やすい性質があります。
- 皮脂膜の材料:皮脂と汗です。皮脂だけではありません。
- バリアの本体:表皮全体ではなく、角層です。

