肌トラブルに関する法律|製造物責任法を中心に

化粧品のルール(1級)

化粧品の肌トラブルに関わる法律は、起きないようにする決まり(予防)と、起きたあとの救済の決まりに分けて整理できます。救済の中心が製造物責任法(PL法)で、請求できるのは「製造物に欠陥があり、損害が生じ、その因果関係がある」場合です。肌トラブルが起きれば、いつでも賠償が受けられるわけではありません。(確認日:2026年11月3日)

この記事は、テキストの第6節「肌トラブルに関する法律」の範囲に対応します。

このテーマのまとめ:化粧品の品質と安全性まとめ|トラブルと官能評価

肌トラブルに関わる法律は、「予防」と「救済」の2つに分けて見ていきましょう。

この節の位置づけ

  • このサイトでは、第6節のテーマを、法律の側から安全を支える決まりとして整理します
  • 第7節「化粧品と肌トラブル」にあたるテーマ(かぶれやパッチテストなど)は、化粧品と肌トラブルで扱っています
  • この記事は、症状の診断や治療を説明するものではありません。赤み、かゆみ、ヒリヒリが続くときは、化粧品の使用をやめて医療機関に相談してください

製造物責任法(PL法)の考え方

製造物責任法は、製造物の欠陥によって人の生命・身体・財産に被害が生じたとき、製造業者等が負う損害賠償の責任を定めた法律です。化粧品も、製造された動産なので、対象になります。

項目内容化粧品での考え方
製造物(第2条第1項)製造又は加工された動産。不動産、電気、ソフトウェア、未加工の農林畜水産物などは含まれない化粧品は製造された物なので、製造物にあたる
欠陥(第2条第2項)製造物が通常有すべき安全性を欠いていること。製造物の特性、通常予見される使用形態、引き渡した時期などの事情を考えて判断する。安全性に関わらない単なる品質上の不具合は、欠陥にあたらない色や使い心地の不満だけでは、欠陥とはいえない
損害(第3条)人の生命、身体、財産に被害が生じたこと製造物そのものにだけ損害が生じたときは、この法律の対象にならない
因果関係(第3条)欠陥によって、その損害が生じたこと被害者が、欠陥があること、損害が生じたこと、その因果関係を示す必要がある
責任を負う者(第2条第3項)業として製造・加工・輸入した者のほか、製造業者として氏名などを表示した者、実質的な製造業者と認められる表示をした者化粧品の容器には製造販売業者の氏名・住所が表示される(薬機法第61条第1号)。表示の内容によって、製造業者等にあたりうる

欠陥は、一般に次の3種類に整理されます。

  • 設計上の欠陥:設計の段階でのミスがある
  • 製造上の欠陥:製造や検査の過程でのミスがある(異物の混入など)
  • 指示・警告上の欠陥:取り除けない危険について、事故を防ぐための適切な情報(使用上の注意など)を与えていない

化粧品では、使用上の注意や表示の書き方が、指示・警告上の欠陥の点でも大切になります(化粧品の表示事項)。

製造業者等は、過失がなかったことではなく、「引き渡した時点の科学・技術の知見では、欠陥があることを認識できなかった」ことなどを証明したときに、責任を免れます(第4条第1号)。製造物責任法では、製造業者に過失があるかどうかは、賠償責任の要件ではありません。

なお、損害と賠償義務者を知った時から3年(人の生命・身体の侵害は5年)、製造業者等が引き渡した時から10年で、請求権は時効で消えます(第5条)。化粧品による肌トラブルは身体の侵害にあたるので、知った時からの期間は5年です。個別の事案の判断は、最終的に裁判所が行います。詳しい要件は、消費者庁の製造物責任法の概要Q&Aで確認できます。

薬機法の安全のしくみ

製造物責任法が「起きたあとの救済」なら、薬機法は「被害の発生・拡大を防ぐ」仕組みです(法律の全体は化粧品と薬機法まとめ)。

しくみ内容
副作用等の報告医薬部外品・化粧品の製造販売業者は、副作用や感染症によるものと疑われる症例などを知ったときに、厚生労働大臣に報告する義務がある(薬機法第68条の10第1項。報告の提出先は医薬品医療機器総合機構で、第68条の13第3項による)
回収の報告製造販売業者が回収に着手したときは、その旨と回収の状況を厚生労働大臣に報告する(第68条の11)
回収などの命令厚生労働大臣や都道府県知事が、廃棄・回収などを命じることがある(第70条)

化粧品などによる皮膚障害など、販売前に想定されなかった副作用の事例が起きたことを踏まえ、2014年(平成26年)4月から、化粧品の重篤な副作用なども個別の症例ごとに報告する義務になりました(それまでは研究報告の扱い。厚生労働省の通知)。回収の流れとクラス分類は、化粧品の不良品とトラブルで確認できます。

表示・広告のルールがトラブルの予防になる理由

表示と広告のルールは、トラブルを起こさせないための決まりで、製造物責任法(救済)とは役割が違います。

区分目的主なルール
予防誤った使い方や、期待しすぎによるトラブルを防ぐ容器への表示(表示事項)、成分を確認できる全成分表示(全成分表示)、広告の誇大表現の禁止(広告ルール)
救済被害が出たあとの賠償・補償製造物責任法による損害賠償

たとえば全成分表示は、消費者が、自分に合わない成分を確認して、製品を選べるようにするための情報です。広告で「副作用がない」と保証する表現が認められないのも、安全だと思い込んで使ってしまう事態を避けるためです。

困ったときの相談先

相談先こんなとき
医療機関(皮膚科)赤み、かゆみ、はれなどが出た・続くとき。使った製品の容器と全成分表示を持って行く
購入先・メーカーの窓口製品の状態や、使い方・対応について知りたいとき
消費者ホットライン188局番なしの188に電話すると、最寄りの消費生活相談窓口を案内してもらえる。どこに相談すればよいか分からないとき

賠償を求められるかどうかは、個別の事情で変わります。迷ったら、まず使用をやめて医療機関に相談し、そのうえで消費生活相談窓口に相談するのがおすすめです。

試験での問われ方(取り違えやすい点)

混同しやすいので、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 製造物責任法の要件:欠陥・損害・因果関係です。「肌トラブルが起きれば賠償」ではありません
  • 欠陥の意味:「通常有すべき安全性を欠いていること」。安全性に関わらない品質の不具合は欠陥ではありません
  • 過失:製造物責任法の賠償責任は、製造業者の過失の有無にかかわらず問われます
  • 予防と救済:表示・広告の規制(予防)と、製造物責任法による賠償(救済)は別のものです
  • 薬機法の報告:副作用等の報告は第68条の10第1項、回収の報告は第68条の11です

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